あかつき便り


 あかつきの村には現在、 4 名の元ベトナム難民の障がい者の方たちがグループホームで生活し ています。当時の難民障がい者支援の方向性として、拠点とされたのがあかつきの村でした。 今尚、日本全国に障がいを持つ元難民の方たちがそれぞれの地域で生活をされており、時折、 相談が寄せられることもあります。しかし、親しみのある地域を離れ、慣れない場所へ生活の 居を移すことを選択されることは、月日が経つにつれ、減少してきました。もちろんそれぞれ の地域で苦労もあるとは思いますが、それだけ自分の「居場所」と思えるところが日本にたく さんあるということは、とても喜ばしいことだと思います。  私が初めて石川神父様にお会いしたのは、既にご病気があまり芳しくない頃でした。新しく 名前を覚えることは難しかった時期で、毎回、「初めまして」とご挨拶をし、御来客の方には私 を「ベトナムの方の子どもです」とご紹介をされていました。私にとっては短い時間の中での 良き思い出です。

 その頃、よく神父様がお話されていたのは、「まさかあかつきの村がこのような形になるとは 思いもしなかった」というお話でした。難民の受入のお話があったとき、紆余曲折有りながら も門戸を開くに至ったこと、それはまさに、神様の計画であったのでしょう。その後、大変な ご苦労もあったことかとは思いますが、この話をされているときの神父様は、いつも本当に嬉 しそうな笑顔を浮かべておられました。  現在も篤志ある多くの方たちの支えの中、今ここで生活をされているベトナムの方たちが望 まれる限り、居場所であり続けること。このことがあかつきの村の最も大切な理念であること は揺るぎません。数年前より、その為の運営の安定化が大きな課題となっており、何らかの新 たな事業の創設、もしくは、現在行っている事業の拡大についての取り組みを考えなければい けない時期に差し掛かっています。

  この間、一応の責任ある立場にある 1 人として、色々な可能性を模索してきましたが、どれ も思うようには進みませんでした。正直、やきもきすることもありましたが、いつも脳裡に去 来するのは、前述の石川神父様の言葉でした。人の計画を越えて思いもよらぬものがあたえら れる...。あかつきの村に起こった色々なことを思い返すと、本当にそうなのかもしれないなぁ と思うことがあります。  この数年間の取り組みの中で、農業とレアメタルのリサイクルは不思議と進展してきました。 どちらも運営の安定化には全くの無縁ですが、このことを通じて、多くの方との関わりが生ま れ、あかつきの村に新たに足を運んで下さる方が多くなりました。あかつきの村が抱えていた もう 1 つの課題である、「多くの方の拠り所であり続けること」に繋がることでした。また、ど ちらも 1 人の人の動きではなく、多くの人たちとの繋がりによって形作られ、喜びを分かち合 うことができることでした。数年前、個人的に大変お世話になった方があかつきの村を訪問し て下さった際、「シェア(分かち合うこと、共有すること)」についてお話をされていたことを思 い出します。これからは様々な人たちとの共働性がより必要になるとのお話でした。

  運営の安定化という課題は変わらずにありますが、きっと、今、大切なことを歩ませていた だいていることを信じ、神様のお導きに素直でありたいと思います。 


  1. あかつき便り2014年第1号